2012年10月31日水曜日

テイスティング3連日

10月も終わりに近づき、そろそろ試飲会シーズンの到来。ブドウの収穫も終わり、ワイン作りの最初の課程が一段落ついて、生産者さんたちもやっと少し蔵を離れることできる頃なのでしょう。新酒の出荷も控え、売り込みを始める時期でもあるのかもしれません。

というわけで、この週末はテイスティングが続きました。

まずは27日の土曜日、カーヴ・オジェにて、ラングドック地方生産者の試飲会。
この日は青空が広がって気持ちが良かったのですが、前日からぐっと気温が下がってとっても寒かった!なので、野外でのテイスティングは結構辛い…。グラスを持つ手が凍えます〜。
私は午前中にテイスティングに行き、それから出勤ということになっていたので、朝一番に到着。しかしその状況では、ワインも開けたて、気温も低い…ということで、なんだかちゃんとテイスティングできてるのかどうか「?」な気分。いつもならタンニンがしっかりしているイメージのワインも、軽くさわやかに感じられたりして。(いや、ヴィンテージが違って本当に軽くなったのかもしれませんが。)
そして、生産者さんたちも辛そうでした。スタンドの後ろから出てきて、そこらを一回り走っていたりして。ドメーヌ・ドュ・ポシーブルのロイックには「うちのほうは雪が降ったらしいんだよね」と言われ、「うっそー」と思いましたが、地方に住む友人たちからのツイートをみると、本当だったみたいです。寒い寒いと思ったら…うーん、もう冬か!?考えてみたらもうすぐ11月ですもんね。うちのお店に出勤したら、さすがに暖房をつけていました。

翌日の日曜日はシャポー・ムロンというカーヴ兼ワイン・ビストロで新酒の試飲会。(携帯を紛失したうえ、カメラを忘れたので写真はありません…ごめんなさい。)
生産者は4名のみの小さな試飲会でした。それぞれが新酒を一つか二つずつ出していて、30分ほどで終了。フラール・ルージュ(ジャン=フランソワ・ニック)、ポトロン・ミネ(ジャン=セバスチャン・ジョアン)、レオニン(ステファン・モラン)と、ルシヨン地方ばかり3蔵+南西地方のニコラ・カルマラン。やっぱり南だとブドウを摘むのも早いし、新酒をつくりやすいのでしょうね。でもステファン・モランは、「一番摘みの熟成度が他より低いブドウと短い醸造期間で、どれだけ美味しいものを造れるのかが勝負だ」と言っていました。新酒づくりは醸造家として一種の賭けなのでしょうか。
実際、ワインがどんなものに仕上がるかは100%確実にわかるものではないのでしょう。醸造家にとっては冒険の連続なのかもしれません。
上の写真は別の日に飲んだステファン・モランの「アメデ」2010年。

月曜日は、ケヴィンのビストロ、オトゥール・ダン・ヴェールにて。ここの試飲会は和気あいあいとした雰囲気で好きです。ケヴィンはもちろん、ワイン関係の知人に会ったり、土曜、日曜とすでに顔を合わせた生産者さんも多く、個人的に楽しい試飲会でした。(こちらもカメラを忘れ、試飲会の写真はありません…再びごめんなさい。)私の好きなル・マゼルのジェラルド・ウストリックやムーレシップのアラン・アリエも来ていました。
でも、定休日なのに、テーブルの配置換えをしたり、グラスを洗ったり、料理したり…スタッフの方たち、ご苦労さまです!
ちなみに、普段、開店直後の人のいないときはこんな感じです。

気まぐれに顔を出すケヴィンの愛犬、アルメルちゃん。
試飲会の日もときどき現れて、人々の間をさっそうとすり抜けていきました。
さて、今回は4月に別の場所で試飲したのと同じワインを再びテイスティングする機会となりましたが、だいぶ印象が変わっていたりして、以前のメモと見比べてみると面白い。先が読めないのというのは、まだまだ未熟な証拠ですが…。
ちらは4月の試飲会のときの、ル・マゼルのワイン。
今回再テイスティングしたのは「ミアス」だけですが、
甘みがだいぶ落ち着いて、とっても美味しくなっていました。
うちの店主もこの試飲会に来ていて、一緒にはまわりませんでしたが、後からそれぞれの印象を話し合ってみたら、同意点、相違点があって、これも勉強になります。

しかし、これだけ連続でテイスティングしたら、最後の方は歯にしみてちょっと痛くなりました。虫歯があるのかも??そして気づいたら、グラスを持つ右手の人差し指の第一関節の辺りもワインがしみて黒くなっていました…。

2012年10月15日月曜日

瓶詰めイベント

店主が友人と共同で樽ごとワインを購入したとのことで、お店で瓶詰めしよう!ということになりました。

ワインは、ボンヌゾーというロワール地方で造られたもの。この地域のアペラシオンを名乗るのが認められているのは、白の極甘口ワインのみ。今回のはアペラシオンなしですが、果皮にカビがついて糖分が凝縮されたブドウからつくられる貴腐ワインです。セバスチャン・ガンデュベールという生産者で、ブドウはオーガニック栽培、醸造過程で酸化防止剤無添加の自然派ワイン。

そして樽は容量225リットル。樽だけでもなかなか重そうですが、それだけのワインが入っているとものすごーく重そう。瓶詰めイベントに先駆けること一週間ほど前に樽が運び込まれたとき、男性6人がかりで車から下ろしていて、かなり大変そうでした。

というわけで、一週間ほどお店で預かっていたのですが、お客さんたちも興味津々。「瓶詰めするので来てね〜」と声をかけていましたが、日曜日の午前だったのと、当日は生憎の雨で、思ったよりも人は少なめ。でも結果、その方がよかったかも。ただでさえ段ボールが積み上げられて狭い店内に、この樽の他、瓶に栓をする機械を設置。そのうえ、次々と洗った瓶が運び込まれ、詰め終わって栓をした瓶も所狭しと並べられていき、移動困難な状態に…。
私も写真を撮りたかったのですが、なかなか良い場所に行き着けず、ちゃんとした写真が撮れなくて残念。しかも途中でバッテリーが切れちゃったし。
…というわけで、写真はブレブレだし何かよくわからない状態のものしかなくてごめんなさい。

瓶詰めを見るのは初めてだったので、面白かったです。
樽から外の容器にチューブでワインを流し込みます。容器の中で浮いている白いボールは…何なのかわかりませんでした。極甘口なので、白ワインといってもかなり濃く、琥珀に近い色。
容器に瓶をさしてワインを流し込みます。いっぱいになると自動的に注入が止まります。(重みで止まるようになっているのかな?)
その後ろで、栓をする機械が待機。
セバスチャンが、瓶内の量を微調整してコルク栓をしていきます。

さて、当日、開始予定時間は10時半でしたが、「来るのは何時でもいいよ」という店主の言葉に甘えつつ、まあ準備にやっぱり人手が要るだろうなあと思い、11時に到着。…って、着いてみたら店主しかいないし…。しかも彼も5分前に来たばっかり。生産者のセバスチャンがもう少し遅れてやって来て、それから栓をする機械を設置して、瓶を洗って…とかやっていて、本格的に瓶詰めが始まったのは結局12時近く!相変わらずの呑気チーム…。そして、徐々に人が集まり、瓶詰めが始まる頃には結構な人だかりに。でも、最初は神妙に見物していた人たちも、試飲が始まり、ずっと同じ地味な作業の繰り返しなので飽きてきて、やがて働く人たちを尻目におしゃべりに夢中。まあ和気あいあいとして、これがいつものペースなのですが。

途中、残りの量が少なくなってからワインがうまく流れ出てこず四苦八苦したりしつつ(こういうことに精通しているはずのセバスチャンは奥さんを迎えに行っていていなかった)、最後はひっくりかえして樽を空にし、約4時間かけて瓶詰め終了。お疲れさまでした〜!

この後は、ビストロでワインに合わせた食事会。私は参加しませんでしたが、フォワグラ、ポトフ、ブルーチーズ、タルト・タタンというメニューだったらしいです。瓶詰めが大幅に遅れたため、13時からの予定が16時過ぎからスタートとなり、ビストロのシェフもしびれを切らしていたことでしょう。同情…。

2012年10月7日日曜日

今日のワイン:Lilian Bauchet "Ceci n'est pas une banane (Beaujolais Nouveau 2011)"

フランスの今年のブドウ収穫もそろそろ終わる頃。もうすぐボジョレ・ヌーヴォーの季節ですね。

…って、夏休み明けの9月半ば、お店に戻ったら去年のボジョレ・ヌーヴォーが山積みになっていました。「あ、もうヌーヴォー届いたの?」と反射的に反応されたお客さんに「ええ、10ヶ月くらい前にねー」とお返事しておきました。
多分、店主があまりやらない大々的な片付けをしていたら出てきたのでしょう。本当に整理が悪い店です…。(いや、わざととっておくこともあるんですけどね。今回のは忘れていたものと思われる。)

ほとんど誰でも知っていることだと思いますが、「ヌーヴォー」とはフランス語で「新しい」という意味で、ボジョレ・ヌーヴォーはボジョレの新酒なのです。販売解禁日は11月の第3木曜日と決められており、ワイン好きでなくても「季節ものだから」と飲んでみる人も多く、この日のワイン屋はちょっとお祭りのようになります。(日本では、ボジョレ・ヌーヴォーのプールができたりすごいイベントがあって、フランスよりももっと盛り上がるようですが…。)そして一般的には、ヌーヴォーというからには新しさに意義があると考え、ほとんどの場合は遅くとも11月中に売り切ってしまいます。
でも本当は、その年のブドウの出来具合にもよりますが、ちゃんと造られたワインならヌーヴォーでもかるく1年2年はもちます。

さて、当然のことながら、長くストックしていたワインは、店主が必ず試飲してから出すかどうか決めます。なので、時期はずれに再び山積みされたボジョレ・ヌーヴォーを見て、店主に「味見したの?どうだった?」と感想を聞いてみたら、「うん、美味しいよ、機会があったら君も飲んでみるといいかもよ」との返事。

ということで飲んでみた去年のヌーヴォー。
リリアン・ボシェの「これはバナナではない」という名前のついた2011年のボジョレ・ヌーヴォーです。
ボジョレ・ヌーヴォーの典型的アロマの表現として、よく「バナナの香り」と言われるので、それを揶揄したものでしょう。そして、マグリットの「これはパイプではない」のパロディ。なかなかユーモアがきいてます。

抜栓してみたら炭酸ガスがかなりあって、時間をおけばもっと落ち着いたのでしょうが、その前に飲んでしまって…って、すいすい飲めるワインだったということですね。ちゃんと果実味とタンニンがあって、まだまだ若々しいフレッシュさが魅力的。ヌーヴォーうんぬんを抜きにして、普通にボジョレとして美味しいワインでした。

今年のボジョレの収穫量は激減だそうですが、どのような出来になるのでしょうか。ちょっぴり心配(生産者さんの苦労を考えると)、でも楽しみです。

2012年10月5日金曜日

今日のワイン:Domaine Alexandre Bain "Puilly-Fumé" 2009

昨日は仕事ではなかったのですが、お店の地下カーヴの工事をしているので様子を見に寄ってみました。たまたま営業の方が来てテイスティング会となり、そこへ店主の友達も加わって、和やかな雰囲気のまま居座り、いつの間にか接客している私。結局、閉店までお手伝い。とはいえ、閉店近くになると人もまばらで(っていうか、もともとそんなに忙しくない店だし)、店主が「コレ、飲んでみる?」って、冷蔵庫から一本出して開けてくれました。
プイイ・フュメのアレクサンドル・バン!
これを出されて断るワケがありません。

開けたては、完熟ぶどうのふくよかな甘みたっぷり、同時にミネラルも多少感じられます。私はまだよく感じ取れないのですが、店主曰く、「残念ながらSO2(二酸化硫黄)添加がわかる」とのこと。とはいえ、多量ではないはずです。ドライフルーツと南国のフルーツ(ココナッツやライム)の味わい、シナモンのようなスパイス…そして段々と、ワインを支える土台にある石のミネラルさが現れて、最初よりだいぶ甘みが抑えられてきました。時間がたつと、実はかなりミネラルで、意外としまりのあるワイン。
「アンコウのココナッツミルク煮なんか合いそう」と店主。「うんうん、でもあんまりスパイスがききすぎてない料理が良さそう」「そう、ちょっとレモングラスを加えるくらいで」…「あと、鳩の薄いパイ包みとかさあ」「うーん、それか、全然手をかけてない料理に良いかも。良質のチキンを単純に塩でグリルしてレモン汁をかけたやつとか」…なんて、二人で想像をふくらませて盛り上がりました。こういう、想像力(食欲?)を刺激されるワインって楽しい!
そして、ついつい手が止まらず…。閉店時間となったので、店主が飲みきらなかった残りをくれました。

家に着いてから、帰宅の遅い夫を待ちつつも、続きを一人で晩酌。おいしい〜、やめられない〜…と良い気分で飲んでいたのですが、帰ってきて味見した夫に「うーん、SO2が入ってるんじゃない?僕は好きじゃないな」と一蹴されてしまった…。がーん。
たしかに、SO2が入ってるなというのは、飲んでいて私にもなんとなく感じられたし、最後はかなり落ち着いておとなしい味わいになってはいたんですけれども…。
まあ、人の好みはそれぞれ違うってことの良い例でしょうか。しかし挫けずに、次、以前飲んでとても美味しかったマドモワゼルM(2009年)を奮発して買ってこようかなと思います!