2014年2月19日水曜日

今日のワイン : Daniel Sage "Grange Bara" 2012

このダニエル・サージュという生産者さんのことはよく知らないのですが、彼のワインは「物凄くウマイ!」と(一部で)評判になっていると噂で聞いてました。とにかく生産量が少ないらしく、店主が仲の良いエージェントに分けてもらったものも各キュヴェ1ダースずつとかで、店頭では出し惜しみ状態。でも、ガメイ種の「Abreuvez ses sillons(アブルヴェ・セ・シヨン)」は、店主と一緒にこれを飲んだ人たちが次々と買い求め、あっという間に売り切れに。次に出してきたのが、この「グランジュ・バラ」。(他のキュヴェも何処かにあるはずだけど…店主が店内整理をして以来見当たらない。何処へ隠したのやら?)
生産者さん自身のこともですが、彼のワインについての情報も乏しい…。でもこれはアペラシオンがサン・ジョゼフなので品種はシラーのはず。

実はコレ、私はちゃんと飲んでいません。というか、開けた時に同席していませんでした。土曜日の朝、お店に出勤してみたら、飲みかけの瓶が沢山あって、そのうちの一つにこれが混じってました。(金曜日の夜はよく飲み会になってるみたいです。)残りは瓶の底から数センチだけ、栓もしていない状態で放置されていました。こういう場合、酸化してしまってたりヘタレたりして飲めなくなってしまうものも多いのですが、一応香りをかいでみたら、なんかいけそう?という感じだったのでグラスに注いでみました。そうしたら…!「うんわー、美味しい!」ミネラルがじわっと感じられて、赤い果実のフルーティさもあって、タンニンも軽くて細かい。肝が座っていながら繊細、という印象。これはやっぱり店主が「すごく美味しいよ」と実感込めて言っていただけある!

…と感心しつつ、瓶をまたそのまま放置。わずかに残っていたのを捨てるのが勿体なくて、かといって、飲むヒマもなくて。

そして週明け、月曜の午後にカウンターの上を片付けていたときに、「さすがにもう捨てるか」とこの瓶を手にしてみたら、やっぱりまだほんのちょっとだけ残ってる。普段なら情け容赦なく流しに捨ててしまうのですが、こいつはもしかしたら…と思い、グラスにあけてみました。そうしたら!まだ飲める!!
さすがに少し酸化してきていたけれど、「美味しい」と言って飲めるレベル。それも逆に好きな味わいになってきてる。すごーい!
開栓後3日、わずかな量で、しかも栓をしないで、これだけもつとは…。(いや、他にももっともったワインはありますけどね。)はかり知れないポテンシャルがあるんですね。久々に心を揺さぶられました。

で、私にとってはちょっと値の張るワインですが(今月、口座から税金をどっと引かれるので苦しいのです)、夫には黙って一本買っちゃいました。でも夫と一緒に飲みたいし、といって飲むときには贅沢しちゃったことがバレるだろうしなあ…困った。

2014年2月16日日曜日

ロワール地方のワイン見本市 Anonymes & Dive Bouteille

2月2日から4日まで、ロワール地方のアンジェとソミュールでワイン見本市がありました。
この週末にこの地でいくつもの見本市があって、ワイン業界の人が集まってきていました。しかしそれぞれがなかなかの規模、特にソミュールの「ディーヴ・ブテイユ」という見本市は100を超える生産者が集まるので、全部カバーするのは至難の技。しかも私は土曜日の店番をしてからだったので、1日出遅れました。「どうせテイスティングしきれない」という闘う前から降参姿勢、気合いユルユルモードで参入。
日曜の朝、アンジェに到着し、先に来ていた店主+店主の友人カメラマンと合流。アンジェでは「ルネッサンス」という、わりと大きい見本市があってそこへ行く人が多かったのですが、店主と彼の友人は前日にまわったそうなのでパス(でも、行っておくべきだったかなーと後で後悔)。車を45分ほど走らせ、ソミュールの「ディーブ・ブテイユ」へ。

「ディーブ・ブテイユ」はカーヴ・アケルマンが会場になっていました。実際に行くまでどんなところか全く想像つかなかったのですが、要は岩を掘ってつくったワイン醸造&貯蔵カーヴでした(「アケルマン」ってワインを造っている会社だったのね…)。現在は見学用になっているみたいです。そういえば、昔、旅行で友達と訪れたランスのポメリーのカーヴがまさにこんな風だった。地質もシャンパーニュと似ているかも?

自然の岩そのままなゴツゴツな壁。

上を見上げると穴が…。井戸の跡ですって。
(それにしてもこの照明の色、なんとかして欲しい…
と感じたのは私だけではなかったようだ。)

フルート型グラスが吊り下がっているデコ。
この見本市のためにわざわざ?
と思ったけれど、もとからある内装らしい
(だから、この照明の色は……)

同じく造形アートもこの見本市のため?と思ったら、
やはり通常からある装飾。
しかし、さすがカーヴだけあって寒い…!

カーヴが見学コース風な一方向のつくり(入り口から出口まで一つの順路)になっていて、循環型ではないため、あっちこっちへ移動がしづらい。入ってすぐ、いきなりラングドックとかローヌのスタンドだったのですが、やっぱりまずは軽めの地方からいきたいということで、「一番奥のシャンパーニュとアルザスのところへ行こう」ということに。で、歩き出したは良いけれど、店主が途中で顔見知りの生産者さんと目が合うたびごとに立ち止まって挨拶。結局、ローヌやら南西部やらロワールやらを先にテイスティングすることに。しかし私は「どうせ注文は店主がするのだし…」と、気分はすっかりおんぶ状態。それでも一緒にテイスティングしていると時々店主に感想を聞かれる…のですが、彼と私の好みが合わない!大丈夫なのかこの店、私が売ってて?…とちょっと不安になりました。
個人的に印象深かったのはロワール地方アンジューのオリヴィエ・クザン。前から知っているけれど、こうして他の若い生産者と並べて飲んでみると、やっぱり美味しいんだなあ、年の功というのだろうか…と思いました。それと、アルザスのステファン・バーンワルト。道中(スタンド多いし、道のり長いし、本当に「旅」って感じだったんですよ)のテイスティングではちゃんと吐き出していた店主も、ここではしっかり飲んじゃってるし。アンフォラで醸造しているというキュヴェが面白かったです。

お昼休憩の後、アンジェへ引き返し、ホテルにチェックインしてから「アノニム」へ。
こちらはコレジアル・サン・マルタンという、キリスト教関連の建物の中。
聖人たちに見守られながらのテイスティング

建物全体が文化遺産に指定されているらしく、昨年はワインで床が汚れてお叱りを受け、撤去の際に掃除をさせられたらしい。今回はスタンドの下にカーペットを敷くことが条件で貸してもらったのだとか。それでも100%は被害が防げなさそうな気がするけど…。
この見本市は「ディーブ・ブテイユ」に比べてずっと規模が小さいとはいえ、やっぱり結構な数のスタンドが。どこをまわるか決めかねて、店主の気の向くままに従ってふらふらとテイスティング。でも、あんまりピンとくるものがないなあ…と思いつつ(いや、一つ二つあったのですが、店主任せにしてたのでメモっておらず、名前がわからない)、閉会間際に「もうそろそろ終わりでいいか」みたいなノリで、店主の良い知り合いなので気を許して寄ったスタンド、ジョエル・クルトーのワインが美味しかった。彼のソーヴィニヨン種の白ワイン、「エピドット」2008年(ミネラル感と蜜っぽさが独特)と「ペリドット」2009年(レモンのようなキレた酸味が印象的)は昨年12月、入荷して2週間くらいですぐ売り切れてしまったのです(入荷数も少なかったですが…)。彼とは1ヶ月半ほど前に偶然の成り行きでパリで一緒に日本酒を試飲したのですが、そのとき飲んだものが気に入ったらしく「あれから日本酒のことをよく考える」と言っていました。自分のワインと日本酒との関係(共通点?)について考えるらしいです。そう語る彼の後ろには、おせんべいやポン酢が…!日本の輸入業者からのおみやげらしい。うううらやましい…。その輸入業者さんが最近出版したらしい日本語のワインガイドも見せてくれて、彼のワイン紹介ページがあって絶賛されていました。
…と、そんなおしゃべりをしている間に、徐々に会場が片付けられ、閉会後の食事会の準備が始められました。
ずらーっと並ぶテーブル。
なんと300人席!

テーブルの上には試飲の残りや、新たに開けた瓶がたくさん!
テイスティングも終わり、ご飯を食べながら油断していっぱい飲んでしまった。

デザートまできっちり食べ、零時をまわった頃に退散。ホテルはメーヌ湖のほとりで、星がいっぱい見えて、「あれがオリオン座だよ〜」なんて夜空を見上げながら良い気分で部屋へ帰って眠りについた…

…までは良かったが、翌日はなんとひどい頭痛。
二日酔い?そんなに酔った覚えはないんだけど??
いや、もしかしたらテイスティングの最中は吐き出していても少しずつ喉を通ってたりするし、食事中はいろいろなものを飲んだし、やっぱり飲み過ぎ?寝不足もたたったかも。
朝食をとりに食堂に下りてみたものの、ロクに食べられず…。しかし食堂で「いっぱい泊まり客がいるなー?」と思ったら、みんなワイン関係者でした。
いったん部屋へ戻って少しウトウトした後、シャワーを浴びてなんとか復活し、再びソミュールの「ディーブ・ブテイユ」へ向けて出発。
アンジェからソミュールまでの車中、休ませてもらったけれど、やっぱりすぐにワインをテイスティングする気分でもない…。カメラマンの友人はホテルの朝食を食べ損なったのでコーヒーを飲みに行き、私は電話をかけたかったので外に残り、店主は先に会場へ入り、「中で落ち合おう」ということでバラバラのスタート。しばらくしてフラフラと中へ入って店主を探すものの、見つからないまま一番奥のブースまで辿り着いてしまった。そこはアルザス、シャンパーニュ、ジュラ、サヴォワのコーナー。と、昨日は見かけなかったジャン=イヴ・ペロンが!昨年の秋、収穫のお手伝いに行ってとてもお世話になった生産者です。「ああー挨拶したい!」と思ったけれど、たくさんの人に囲まれていて近づけない。大人気です。あちらも私に気づいてくれて、なんとかビズはしたけれど、「もうちょっと人が少ない時にゆっくり来よう」と、とりあえず退散。どうせまだ体調がすぐれなくて気分が乗らないし。…などと言ってないで、せっかく来たんだから、やっぱり何かテイスティングしないとなあ…と、ふと後ろを振り向くと、ジュラのジャン=フランソワ・ガヌヴァのスタンドが。どうも彼自身はいないみたいだったけれど、飲んでいる人がいたので、「勝手にやって良いのかな?」ということで、自分で注いでテイスティングさせてもらいました。3つあって、1つ目が「ジャン・ヴー!!!」2012年。これは飲んだことがあって好きなことはわかっていたワインなのですが…これだけ気分が悪くても「美味しい!飲みたい!」と思ってしまった。自分でも驚いた。恐るべし、美味しいワイン。
その場で写真を撮らなかったので、
うちにある2011年のラベルで失礼。

他の2つ(たしかシャルドネとサヴァニヤン)も美味しかった。
…と、こんなところで感動している場合ではなく、店主と落ち合わないと…と、再び迷子探し(ってか、私が迷子?)。しかし、店主とカメラマンを見つけたは良いが、この日は日本酒インポーター「酔い心地」さんの手伝いをする約束をしていたので、ほどなくしてまた彼らと別れ、テイスティングはほとんどできませんでした。(ちなみに日本酒スタンドは意外と人気が高く、いっぱい質問されたりして、大変だったんですよー。)それに、店主と一緒だと生産者さんとのおしゃべりが長くて時間がかかって、あまりたくさんまわれないことがわかりました。次回は本気テイスティングを目標に、適当に別行動しようかな?

今回は物見遊山な、あまり気合いの入らないテイスティングでした。ちょっと反省。次回は頑張ろうっと。