2016年12月23日金曜日

今日のワイン:Jean-Marc Brignot "Cuvée Marc" 2005

今日のワイン…というか、ドメーヌ・デ・ミロワールでの収穫中に飲んだワイン。

ドメーヌ・デ・ミロワールでは、収穫期間中、夜の食事と共にワインのテイスティングがよく行われるのですが、これがブラインドで…なかなか難しい!!
本格的で、グラスも黒。色当てから始まります。あるときなど、白だったのを、全員「赤」って言っちゃったり!(マセレーションだったから仕方ない?)。
いやあ〜、私なんか、普段「美味しい♡」とか「あんまり好きじゃない☆」とか言って飲んでるだけなんだなあーと思い知らせれましたよ…。

で、色々と飲んだ中で、特に印象に残っているのがこちら。
ジャン=マルク・ブリニョの「キュヴェ・マルク」2005年。
手伝いに来ていたフランス人が自分の秘蔵カーヴから持ってきてくれたもの。

ブライドでテイスティングを始めた時点で、「若い!」っていう感じ。まだ炭酸が残っていて(舌の上でプチプチはじける感じ)、何より揮発酸、アセテート(よく「マニュキュアのにおい」と言われるにおい)!!
…って、通常だったら「欠点」ですよねえ〜。ナチュラル・ワイン好きだと慣れっこなんだけど。SO2などの安定剤を施してない証拠でもあるから。でもこういうの、慣れちゃいけないのかなあ、本当は。

とにかく、その造りの率直さから、ワインの向こうの造り手さんに親しみを感じてしまったのです。
なんだか明るく優しく笑ってるような気がしました。
誰か知ってる人っぽいなあ…。

南?
結構タンニンあるし。
ラングドック地方とか、こういう造りの人、多いし。
でも酸がしっかりしてるなあ。

…で、出した答えは……忘れてしまいましたが…
「ラングドックのシラー」とか言ったかも??

どっこい、ジュラ地方、アルボワでした!
ガメイかな?
詳しいことはわからず。
キュヴェ名の由来然り。
(誰か佐渡に行ったらきいてきて〜。)

「乱暴なつくり方と感じる」という意見も出たけれど、私は「やっぱり天才肌だなあ」と改めて感心しました。(「天才」ではなく、あくまで「天才肌」ね。)頭をひねりにひねって悩んでこじれる段階を「えいやっ」っと無邪気に一足飛びに超えて、そしてそれで美味しいワインを造ってしまえるんだなあという感じ。まあ、本当はすごく悩みながら造られたのかもしれませんが…。

しかし10年以上経ってのこの揮発酸。リリース当時はどうだったのだろう?それこそすごかったのではないか??…と、色々と興味のつきないワインでした。

ところで、このワインを持ってきてくれた人は、昨年の収穫のときに私とこの造り手さんの話をしたことを思い出し、今回これを選んでくれたのだとか。収穫に行く日なんて打ち合わせてなかったのに同じ時期に一緒になれて、このワインも飲ませてもらえて…偶然って素晴らしいーーー!ありがとう!!!
…というわけで思い出深いワインです。

2016年12月15日木曜日

ジュラで収穫:Domaine des Miroires

だいぶ前の話になってしまいますが…
10月前半、収穫のお手伝いにジュラにも行ってきました。

実は昨年もお世話になったドメーヌ・デ・ミロワール。
日本人の鏡さんご夫妻がやっているドメーヌです。

昨年は暑さで収穫が思ったよりも前倒しになり、私は収穫初め頃の9月半ばにお邪魔しました。
今年もそんな気分でいたら…
いや、例年通りだったんですねー…。
ということで、こちらの勝手な思惑とズレてしまいました。
でもボジョレにも行ってたので、逆に重ならなくて良かった!
連絡を取りつつ調整し(というか、こちらのプライベートなスケジュールを了承してもらった)、収穫時期最後の方の10月初旬から半ばにかけての約一週間、受け入れて頂きました。

私が到着した日、気持ちよく晴れていて「この青空の下で収穫するのは気持ち良いだろうなー!!」と勇んで行ったら…蔵の中でマールの除梗をする日でした。
マールとは、ぶどうを絞った後の残りのことです。また、除梗とは、ぶどうの房の梗の部分を取り除くこと。
鏡さんのドメーヌでは、ぶどうをプレスした後、マールを除梗して保管し、年末に蒸留酒にしています。
マールの蒸留酒はアルコール度が高いので好き嫌いが別れるかもしれません。他のドメーヌのものを飲んだことがありますが、私は焼酎っぽくて好きです(異論は受け付けます)。個人的にはクリスマス・プディング(フランスであなくイギリスのものですが)と一緒に飲むとすごく合う!…と思っています。

で、マールの除梗に取りかかること数分、いきなり「さあ、おやつの時間ですよ〜!!!」
「???」と思っていたら…
プレスした後にでてくるムース!まさにおやつ。
自然の甘みがあってふんわりしてて、すくって舐める手が止まらない〜。

しかしオイシイお仕事ばっかりではありません。
翌朝、収穫に出かけてみたら、霧!!
さむっ!!
まだ10月初旬なのに、朝の気温は2度…。
畑の中でも先が見えないし!

収穫するぶどうが冷たい…。
そして、ぶどうの葉っぱに露がついて、手が濡れると余計に冷たい。
畑は北西に向いた斜面にあるので、なかなか日が射さない…。
っていうか、太陽が雲に隠れて、顔を出しそうで出さず…。
そして谷間のようになっている畑周辺は霧がなかなか晴れない…。

でも、低い温度のおかげで、熟したぶどうが保存されているわけですね。
少人数、それも私のような素人は収穫に時間がかかるので、これは「天候に恵まれた」というべきなのかな。

余談ですが、この日は週末だったため、狩猟をしている人たちがいたようです。狩猟犬の吠える声や、犬を呼ぶラッパの音が霧の中に響いて、なんかこういうのってすごくヨーロッパぽいなあ(「キャンディ・キャンディ」でアンソニーが落馬して死んだのはこんな日だったのかなぁーとか)…なんて頭の片隅で考えたり。
…と、犬の声が近づいてきたなと思ったら、畑のすぐそばに。
走ってきて、ぐるぐる回って、去っていった…。
そして、きかんぼうらしきこの犬ちゃん達は、ご主人の呼び戻しラッパを一向に介せず、なかなか帰らず、ご主人が手を焼いていたようでした。

畑の周辺で狩猟をしているというのも、すぐ上が森で、鹿が出るのです。
鏡さんの畑のぶどうも、鹿や鳥に食べられてしまうという被害にあっています。ネットを張り、ラジオを鳴らしっぱなしにしたり、時々爆竹を鳴らしたり…と色々な対策をとっていますが、完全に予防するのはなかなか難しいようです。

午前中は霧で凍えましたが、一日の収穫を終える頃には美しい夕焼け。
夕陽を浴びるシャルドネがきれいで見とれてしまったー。

今年は春から夏にかけて雨が多かったため、ベト病が流行ったそうですが、鏡さんのところは対応が迅速・適切だったようで、被害はかなり抑えられたみたいです。
それでも病気で実が乾燥してしまってカリカリな状態になっている房もあり、そういった部分は取り除いて収穫しながらも、上の写真のようにきれいな房ばかりの樹にあたるとすごく嬉しい。

収穫の合間に、そういった病気の話や畑の話などを聞かせていただけて勉強になります。単なる好奇心からの質問でも、いつも丁寧に真摯に答えてくださって、有り難いのと同時に、「やっぱり芯からワイン造りに取り組んでいる方なんだなあ」と感じます。
耕した畝。
色々な耕し方(馬、ウィンチなどを使う方法)
についても解説いただきました。
耕された土はモコモコ!
ぶどうだけではなく、他の植物や虫もここに生きているのを実感。

ちなみに、極力自然と共生する畑。
虫はもちろんですが、蛙がいたときにはさすがにびっくり!
野いちご(もう季節ではないので葉っぱだけ)を発見したり、畑の間に生える若々しい緑のたんぽぽの葉など、つい「美味しそう〜」と思ってしまったり。実際、畑の野草を摘んでお料理されることもあるとか。
手伝いに来ていたフランス人は、帰る前に畑の間できのこ狩りをしてました。

さて別の日、さらに気温が下がって、霜が…!
この寒さを予想していなかったため、着るものなどの準備がいまいちだった私。体調への打撃が内心不安だったのですが、意外と平気だったー!

と、寒さばかりを強調している感じになってしまいましたが、鏡さんのところの収穫は、個人的には実に楽しいのです。ご夫妻とは同世代なので、懐かしの音楽や映画の話、芸能ニュース、フランス生活のエピソード、共通の知人の近況などなど…話題が尽きず、ついついおしゃべりが弾んでしまいます。(手は動かしてます!!)
そして日本から来ている若い世代の方々と出会える幸運。
朝から夜遅くまでやることはいっぱいあって、特に男性は力仕事もあって大変ですが、お互いに冗談を言いながらの、笑い声の絶えない収穫です。

そんな感じで、摘んで食べて飲んで除梗して食べて飲んで…若者たちに気を使っていただき、助けられてラクさせてもらいつつ、いよいよ最終日!
「もうすぐ終わるぞー!」という笑顔
最後に摘んだのはサヴァニヤン

そして収穫終了ーーー!!
最後のぶどうを車に積んで、クラクションを鳴らしながら蔵まで帰ります。
この地域では、収穫を終えた車に花を飾り、クラクションを鳴らしながらぶどうを運ぶのが習慣なのだとか。
しかし、平日の昼間…この小さな村に人がいない!
結局、道すがら手(というか尻尾)をふってくれたのは犬が一匹だけ……
と、思ったらその飼い主さんもいて、ちょっと救われた気分。

しかし、収穫が終わっても、まだプレスとマールの除梗(と、その他諸々の仕事)が待っています。
スケジュール的に私はここまでしかお手伝いできませんでしたが、収穫の最後までいられたのは嬉しかったです。

ボジョレに行ったときに、マックスの話から、生産者さんたちが収穫期間中すごく神経を集中させているということを改めて感じましたが、鏡さんも同じでした。収穫だけでなく、ぶどうをプレスしたり、タンクから樽へ果汁を移したりと、同時進行の作業がいくつもあり、そのひとつひとつに気を配り、ミスのないように細心の注意を払い、でもやっぱり予想外のアクシデントが起こったり…心身ともにエネルギーの要る肝心な時期。「寝る間も惜しんで」とはまさにこのこと。
こんなに大事に造っているワインは、やっぱり大事に飲みたいなあ。 
私のような鈍くさい素人では技術的にはお手伝いできる範囲は限られているけれど、せめて足を引っ張らないように頑張りますー、できれば来年も!
中腹に見えるのが
ドメーヌ・デ・ミロワールの畑









2016年10月20日木曜日

今日のワイン:Domaine de la Grand' Cour "Clos de la Grand' Cour" 2015

というわけで、収穫のお手伝いの後、ジャン=ルイからワインをいただきました。
早速飲んでみたのが「クロ・ド・ラ・グランクール」。ドメーヌの全キュヴェの中のベーシックライン(多分)、フルーリーのワインです。
ヴィンテージは2015年。やっぱり暑かったんだなあ…という第一印象。ボジョレにしてはテクスチャーがやや濃いめで、アルコールの高さも感じました。そして、ちょっと「灼けた感じ」の苦み。

昨年は暑くてぶどうが熟すのが早かった年ですね。そして熟度も例年になく高かったようです。つまり、糖度が高く、アルコール度数も自然と上がり、タンニンも多め。ボジョレで、糖度が高いせいでなかなか発酵が始まらないということもあったらしい。
このヴィンテージは、ボジョレでもロワールでも、太陽の暑さ、豊満な面をもつワインが多いように感じます。「らしくない」と言うと語弊があると思いますが、おおまかに言ってボジョレやロワールのワインの「フルーティで軽め」なところが好きなので、その辺はいつもとちょっと違うな…とやはり思ってしまいます。

抜栓後にすぐグラスに注ぎ飲み始め、その後は二人だったのでゆっくり飲んで、3杯目くらいからは、最初に感じた太陽のパワフルさの影から小粒なベリーの風味が出てきました。そしてミネラル感も。
ちなみに品種はガメイ。

今の感じでは、アペリティフの一杯目にごくごく飲むというより、ボジョレ風に乾燥ソーセージでもつまみながら飲みたいイメージ。これからの季節、暖炉の前で…とかいいなあ。

2016年10月5日水曜日

2016年ボジョレ収穫:Domaine Guy Breton

一日おいて、ボジョレ滞在4日目。
週の後半は本格的な収穫に入りました。ジャン=ルイのドメーヌから少し離れたブルイィの畑は雹を逃れ、立派なぶどうが実っているとのことで、そちらは例年通り大人数チームを組んでの収穫。私たちはそちらには参加せず、マックスの畑へ。
マックスは通称で、本名はギィ・ブルトン。彼のモルゴン・ヴィエイユ・ヴィーニュの古いヴィンテージをラルスイユで飲ませてもらったことがあって、すごく美味しくて、私にとって彼のワインは「寝かせてその良さが引き出される」というイメージがあります。以前働いていたワイン屋の店主も、「Petit Max(プティ・マックス)」の10年近く経ったヴィンテージがめちゃくちゃ美味しかったという体験談をたまにお客さんに話していたっけ。私の中ではなんとなく一段高いところにいる造り手さん。

マックスのところには朝6時半集合!…早い!!とびっくりしたのですが(前回、前々回は8時開始でした)、結局7時に。それでも早い…と思っていましたが、ジャン=ルイのところは6時15分と言っていたので、ボジョレではそれが当たり前なのでしょう。
ドメーヌに着くと、マックスが買いぶどうを移動させている最中でした。これはヌーヴォー用なのだそう。後で聞いたところでは、ここ数日、彼らは朝4時くらいから仕事をしているのだとか…。7時で早いと言っていたら怒られますね。いや、笑われる?

ボジョレでクリュ(保護原産地呼称AOPで与えられる地区名)を得るには手摘みと決められているので、あちこちの畑で収穫チームの姿が見られました。最近では賃金が安いポーランド人の出稼ぎ労働者が増えているとのこと。
マックスの収穫チームは、通常ドメーヌで働いている人も含めて12人。タトゥーやピアスばりばりの女の子とか、ドレッドヘア君とか、迷彩柄パンツにDrマーチン・ブーツのアーミー風ファッションの男の子とか…なかなかの個性派集団。 なんとなく緊張しながら車に乗り込み、いざ収穫へ。


その日はマックスの収穫第一日目で、レニエの畑。
左手の丘がコート・ド・ブルイィ、
右手に建物が集まってみえるところがレニエの町
たっぷりした立派なぶどうがいっぱいなっていて、ジャン=ルイの雹被害の畑とのずいぶんな違いに驚きました。
収穫しながら選果するように言われましたが、トラックに積まれたものをもう一人がさらに選果。

私は慣れないので、いつも遅れとり、列の最後の方は他の人が助けてくれました。中には摘むのがすごーく早い男性がいて、私が列の半分くらいのところでもう終わっている。その人はもう40年近くボジョレで収穫をやっているのだとか。私もあと何年か続けたら、同じくらい早くとは言わないけれど、少しは近づけるかな?

9時ちょっとすぎ、ドメーヌに戻っていたマックスが再登場。お待ちかねのCasse-croûteです!
ここでもやはり、乾燥ソーセージやパテ、チーズ、ワイン。コーヒーもあったようですが、誰も手をつけず…。
畑に到着した頃はまだ涼しかったのですが、だんだんと太陽が照りつけ、暑い!男性は上半身裸になる人も。

1時を過ぎて一旦ドメーヌに戻り、お昼ごはん。収穫チームは先に食べ始めましたが、マックス初め、ドメーヌの人たちは引き続きバケツを洗ったり、収穫したブドウを冷蔵室へ運んだり…。私たちがコーヒーを飲む頃にやっとテーブルにつきました。
「収穫の間はそのことで頭がいっぱいになるんだ。寝ていても蔵の中のちょっとの物音が気になったりしてね」と。これは収穫を手伝った今までの生産者さんも同じでしたが、全身全霊込めている感じです。「これだから奥さんが嫌になって出て行っちゃったんだ」と笑っていましたが…たしかに家族の理解がないと難しい仕事かも。

午後、同じ畑へ戻り、再び収穫。
今度は2列ほどやったら休憩、を繰り返し、わりとラク。
そして、みんな、休憩のたびにビールやワインを飲む、飲む、飲む…!
そして、ワイヤレス・スピーカーを持ってきていたので、トラックからHipHop、パンクなどを大音量で流す…。
個人的には、好きではない音楽を聞かされるのは苦痛なのですが、この風変わりな、お祭り的な、リラックスした雰囲気の収穫は楽しい!
同年代の女性は、「ここの収穫はいいね!」「単なる労働になるのは嫌よ」と嬉しそう。「マックスに10年契約してもらおう!」と笑っていました。

6時前には終了し、ドメーヌへ戻ってアペリティフ。
マックスが彼のワインを色々と開けてくれて、なんと垂直テイスティングまで!
垂直テイスティングとは、同じキュヴェの違う年代のものをテイスティングするものです。
モルゴン・ヴィエイユ・ヴィーヌの2003年、2007年、2012年の三本立て!
2007年は少しパワーが落ちてきている感じがしましたが、2012年はフルーティで軽め、酸がすっきりとワインをスマートにさせている。
面白かったのは2003年。
私にとっては、まさに梅酒!!な味でした。
2003年は歴史的猛暑で、水不足もあり、ブドウが干上がっていたらしい。収穫も例年よりずっと早く、8月だったとか。「酸がなくて、すごく難しかった」と回顧するマックス。でも梅酒っぽいということは、酸が全然ないわけではないと感じたのですが…。私はすごく好きです!


収穫二日目はレニエの畑の続き。
到着した頃はまだ太陽がのぼりきっておらず、朝露がブドウの葉に残っていて、手がかじかむ…。
朝日がまぶしくなってきた…と思ったら、昨日と同じくCasse-croûteの頃には日差しがきつくなってきて、みんなTシャツ姿に。

午前中でレニエの畑が終わり、みんなでトラックに乗り込んで、モルゴンの畑へ移動。

こちらは高台にあり、急勾配。
ぶどうがいっぱいになったバケツを集めてまわる役の男の子が大変そう。バケツがいっぱいになってきた収穫人が「Seau!(ソー=バケツ)」と呼んでも、なかなか下りてこず、3、4人で口々に「Seau!」と叫んでからかったり。でも平坦なところでも「大変な役だなあ」と思っていたのに、この急勾配では…。容器を背負って集める場合もありますが、ここではバケツを手に持って上り下りだったので、余計にきつそう。腕力が要りますね。
一列終わって、集めて選果したものをトラックに積み込む
1時を過ぎて、列の途中で作業を中断、ドメーヌへ戻ってお昼ごはん。私は2時半過ぎのTGVでパリへ戻るため、 ささっと食べて、皆さんにお別れの挨拶をして出てきました。
参加期間がすごく短かったのが残念です。お別れのときに「また来年!」と言ってくれた人もいて、本当にまた来年来ようかな?と思いました。

雹被害のあった今年のボジョレ、逃れた畑もあり、必ずしも「ダメな年」というわけではないと思います。被害のあったドメーヌにとっては、たしかにかなり痛手です。それでも収穫して、工夫して(区画別キュヴェをなくし、まとめて醸造するとか、ブドウを買うとか)、頑張っています。

「ボジョレ」というとヌーヴォーのイメージが強いようですが、もっと醸造に時間をかけたものもあります。残念なことですが、ドメーヌ・ド・ラ・グランクールの人たちと話していたときに、ボジョレという地域はワイン産地としてあまり高く評価されていないというのが一般認識のようだ、ということを思い出しました。それでも、今まで収穫にたずさわったサヴォワやジュラに比べると、ワイン製造をもっとおしすすめてきた地域なのは間違いありません。それは、生産量を狙って工業的なワイン造りが発展してきたという悪い意味もあります。でも、「自然派ワインの父」と言われるジュール・ショヴェがいて、継承したマルセル・ラピエールがいて、今、自然派ワインをつくる人たちがたくさんいて、そういう人たちが仲良く日常で集まっていて… ボジョレという土地はやはりワインの大きな産地なんだなあ、と感じました。 のびのびとした雰囲気があり、家族的なつながりがあり、ワイン生産者でいることに対して肩肘張る必要がない感じ。(まあ実際はどうなのかわかりませんが…。)いいなぁ。

縁あって収穫に参加することができて、良い経験になりました。
パリからわりと近いし、また行きたい!

Great thanks to Aaron!!

2016年10月4日火曜日

2016年ボジョレ収穫:Domaine de la Grand' Cour

先々週(9月20日〜24日)、短期間でしたが、ボジョレへぶどうの収穫のお手伝いに行ってきました!

3年前、サヴォワ地方へ初めてぶどうの収穫へ行き、昨年はジュラ地方(ブログには載せていませんが)、そして今年はボジョレ。

サヴォワとジュラは、ワイン生産地として比較的マイナーな地方。生産量も他の産地より少ない。なぜそういう選択だったかというと、「収穫」という作業にも興味がありましたが、それよりもワインそのもの、そのワインをつくる生産者さんに惹かれたから、と言えるかもしれません。
今回は、ワイン屋で知り合ったアメリカ人の友達がボジョレに住んでいて、「一緒に収穫できるよ」と言ってくれたので、お言葉に甘えてお邪魔してきました。彼はボジョレ・ワインについての本を執筆中。色々な生産者さんと交流し、たくさんのワインをテイスティングしているので、頼もしい。
正直にいって、個人的にボジョレのワインは以前はあまり得意ではありませんでしたが、いくつかの生産者さんのワインを知ってから「ボジョレ」という括りを超えて飲むようになりました。中でも、ミッシェル・ギニエ、イヴォン・メトラ、クリスチャン・ドュクルーが大好きです。
なので、今年の収穫は、特定のワイン生産者さんをピンポイントで訪問するのではなく、「地方」へ訪れるという感覚。

ボジョレまでは、パリからマコン・ロッシェという駅までTGV(フランスの新幹線)で約1時間40分、そこからバスで友達のアパートの住む村までバス。バス停には友達がスクーターで迎えにきてくれました。 アメリカの運転免許がフランスで通用しないということで、彼はボジョレの町をスクーターで走り回っています。私はその後ろに乗っけてもらい、まずはフルーリーの町の中心でお昼を食べ、そこからドメーヌ・ド・ラ・グランクールへ。
偶然ですが、パリのワイン仲間たちが大好きなドメーヌで、昨年は彼らのところに行くと必ずここのワインが出てきて飲んでました。
ドメーヌ主のジャン=ルイと連絡がつかず、直接行ってみたところ、ちょうど車に乗って収穫へ出発する間際でした。すごいタイミングーー!
手伝いに来た地元の二人の女性と同乗し、「シャンパーニュ」という区画の畑へ。

ドメーヌはフルーリーにあり、今年、周辺は雹の被害にあって大部分のぶどうが傷つけられ、収穫は激減。この日、例年なら20人ほどの収穫チームを組んでやるところを、総勢7、8人でした。ぶどうの木や葉にはやはり元気がない。「やせ細っている」といった印象。そして、果実もかなり少なく、全体的に小さめ。たまにしっかりしたきれいな房もあって、少しほっとしたり。結果、絶望的と予測していた量よりやや上回ったようです。
今回、一本あたりのぶどうの数が少ないので立ったりかがんだりが頻繁なためか、腰が痛くなってしまいました…。実は腰が痛くなったのは初めてです。ボジョレの木の仕立てが低いせいもあるかもしれません。
途中、小休憩をはさんで夕方5時半に終了。

ドメーヌに戻ると、他のボジョレの生産者さんたちも遊びに来ていて、ジャン=ルイが自分のワインの色々なキュヴェを振る舞ってくれました。しばらくして、10日間ほどカーボニック・マセレーションしていたぶどうをタンクからプレス機へ移す作業にとりかかりました。
しかしプレス機が故障…。結局その後、一度移したぶどうが酸化してしまう前にタンクへ戻したそうです。翌日、修理の人が来てくれたようですが、その人もこの時期はプレス機の故障で呼ばれることが多いらしい。考えてみれば、プレス機は一年でもこの時期しか使わないし、しかもフル稼働。ある生産者さんが「一週間使いっぱなしだよ」と言っていました。
ちなみにすでにタンクへ入っていたのは、南フランスから取り寄せたサンソーという品種。ラングドックの友達の畑を夏先に訪問したときに、雹被害で収穫が見込めないとわかっていたので、そこのぶどうを買うことを決めたそうです。ジャン=ルイとしては初めての品種。ボジョレではガメイ種だけですからね。新しい試み、ちょっぴり楽しみです。

翌朝、ドメーヌに7時半集合。この日はドメーヌを囲んでいる「クロ」という畑。 ジャン=ルイの友人が二人ほど加わったとはいえ、昨日と同じく少人数での収穫。やはりぶどうは少なめ。

10時頃、ジャン=ルイが車で乾燥ソーセージやパテ、チーズとワインを運んでくれて小休憩。わー、これが噂に聞いていたボジョレ収穫おきまりのcasse-croûte(カス・クルート)かあ!!…と内心ちょっぴり感動。今まで参加した収穫では、これはありませんでした。とはいえ、あまりお腹も空いていなかったし、太陽にあたって酔っぱらってしまいそうだったので控えめに。他の人たちは次々とつまみ、2杯、3杯と飲んでいました。元気!

お昼にドメーヌに戻ってご飯。ジャン=ルイと彼の娘さん、オフェリーが用意してくれました。いつも周りに気を使い、笑顔で大きな声で話すジャン=ルイが「キールにするかい?それとも白ワイン?」「昼ご飯は肉だよー!」「まだたくさんあるから、好きなだけとりな!」とみんなに声をかけ、楽しいひととき。前菜に出たトマトは庭でとれたものだそうで、真っ赤で甘くて美味しい。でも「これが今年最後のトマト。自家菜園も雹でやられたから」と肩をすくめるオフェリー。ちょっとせつない…。
お天気が良く、日陰のテラスで飲んで食べて、和やかな雰囲気で、あー気持ち良い!…って、あれ?何しに来たんだっけ?…と一瞬わからなくなったりして。

午後の収穫の途中、なるべく気をつけていたけれど…やっぱりやってしまった!はさみで指先を切ってしまいました。不器用と不注意は性格のせいだろうなあ、毎回やるんだ、これ…。畑の監督に来ていたジャン=ルイの息子さん、ジュスタンに「絆創膏ない?」と聞いてみたら、「んー、ここにはないなぁ…青いぶどうの汁をつけると消毒になるんだけど」と教えてくれました。なるほど、まだ熟していないぶどうの実は酸が多いので、それで殺菌できるんですねー。ぶどう生産者豆知識?

先日と同じく午後5時半頃、収穫を終え、少ないながらもいっぱいになったケースを積み上げ、一旦冷蔵貯蔵庫へ。
一日のお仕事が終わって、解散の前にみんなでアペリティフ。

っていうか、昨日からワイン飲んでソーセージとパテとチーズばっかり食べている気が…。

(つづく)







2016年9月30日金曜日

今日のワイン:François Dhumes "jeu de vin" 2015

一年以上ご無沙汰しておりました!

ワイン屋を辞め、業界からつかず離れず…という状態で暮らしております。
そしてたまーーーに、以前勤めていたワイン屋のお手伝いをさせてもらったりも。
でも基本、ブルターニュ暮らしです。

さて、今回復活したのは、どうしてもこれは!言っときたい!!というワインを久々に飲みまして。
…といっても約一ヶ月ほど前のことになりますが。

夏の日差しの強さが若干残る、9月初日。
段々と日が短くなっているとはいえ、まだサマータイム。遅い日暮れまでの時間、ボートで海へ出て浜辺でアペリティフ…という私たちの夏の定番をこの日も楽しみました。
そして、持って行ったのがフランソワ・デューム「ジュ・ド・ヴァン」2015年。
きれいな色!日にかざしてうっとり。

オーヴェルニュ地方で造られたガメイ種です。
オーヴェルニュはワインの生産地としてはあまり知られていませんが、山々の連なる地域で、ワインを造るのにはとても適していると思います。昔の火山地帯で、その地質がワインの味に影響しているのでしょうか、多くの場合、ミネラルが感じられ、個人的には大好きです。

そしてこのワインは!
ミネラルだけでなく、ウマミたっぷり!!
超絶美味し過ぎてもう「ノー・コメント」!!!

…って、ノー・コメントじゃあ話になりませんね。

敢えて言うなら「これはワインじゃない」。

以前、友達がうちに遊びにきたときに、自分の大好きな自然派ワインを出したら、「これ、美味しいね。でもワインじゃないわね」と言われたことがあります。その友達は、昔ワイン・バーをやっていたワイン好きな人ですが、クラッシックなワインの味に慣れている人でした。
つまり「美味しい」けれど、彼女の考える「ワイン」という規範にそぐわない、ということだったようです。
じゃあ「ワイン」って一体何なの?と、そのときの私は思いました。
たしかに自然派ワインは一般にイメージされている「ワイン」という枠に当てはまらないことがあります。それは普段は隠されようとしている個性的な面、揮発酸やアセテートのような「欠点」と言われる部分などが突出してしまっていたり、樽香がしなかったり(わざとらしい樽香を嫌う生産者も多いですし、樽で熟成されていなかったら当たり前のことですが)、色々な要素が原因となるでしょう。でも、それでもワインなのです。「ワインではない」と言ってしまうのは、飲む側の固定観念のせい、想像力不足のせいなのではないでしょうか。
だから「これはワインじゃない」と言われるのは、すごく嫌でした。

でも、このジュ・ド・ヴァンは、「これはもうワインじゃない!」と感じてしまいました。それは「ワインという枠を超えている!」という意味です。

「これはワインじゃない」かもしれない。
でもワインじゃなくったって良い。
カテゴリーなんてどうでも良い。
ワインという枠にわざわざ押し込める必要はない。
ただただ美味しい!!
それに尽きる。
だからもう「ワイン」じゃなくて「美味しい飲み物」と呼びたい!!

…ということを初めて考えさせられたワインでした。
(今までが考えなさ過ぎなのかもしれませんが…。)

ただ、やはり生きているものだから、その日そのときその場所で自分にとってはすごくすごく美味しかったけれど、別の機会ではまた違う顔をみせるかもしれません。
そういうところも含めて、やっぱりワインが好きなのです。