2016年10月5日水曜日

2016年ボジョレ収穫:Domaine Guy Breton

一日おいて、ボジョレ滞在4日目。
週の後半は本格的な収穫に入りました。ジャン=ルイのドメーヌから少し離れたブルイィの畑は雹を逃れ、立派なぶどうが実っているとのことで、そちらは例年通り大人数チームを組んでの収穫。私たちはそちらには参加せず、マックスの畑へ。
マックスは通称で、本名はギィ・ブルトン。彼のモルゴン・ヴィエイユ・ヴィーニュの古いヴィンテージをラルスイユで飲ませてもらったことがあって、すごく美味しくて、私にとって彼のワインは「寝かせてその良さが引き出される」というイメージがあります。以前働いていたワイン屋の店主も、「Petit Max(プティ・マックス)」の10年近く経ったヴィンテージがめちゃくちゃ美味しかったという体験談をたまにお客さんに話していたっけ。私の中ではなんとなく一段高いところにいる造り手さん。

マックスのところには朝6時半集合!…早い!!とびっくりしたのですが(前回、前々回は8時開始でした)、結局7時に。それでも早い…と思っていましたが、ジャン=ルイのところは6時15分と言っていたので、ボジョレではそれが当たり前なのでしょう。
ドメーヌに着くと、マックスが買いぶどうを移動させている最中でした。これはヌーヴォー用なのだそう。後で聞いたところでは、ここ数日、彼らは朝4時くらいから仕事をしているのだとか…。7時で早いと言っていたら怒られますね。いや、笑われる?

ボジョレでクリュ(保護原産地呼称AOPで与えられる地区名)を得るには手摘みと決められているので、あちこちの畑で収穫チームの姿が見られました。最近では賃金が安いポーランド人の出稼ぎ労働者が増えているとのこと。
マックスの収穫チームは、通常ドメーヌで働いている人も含めて12人。タトゥーやピアスばりばりの女の子とか、ドレッドヘア君とか、迷彩柄パンツにDrマーチン・ブーツのアーミー風ファッションの男の子とか…なかなかの個性派集団。 なんとなく緊張しながら車に乗り込み、いざ収穫へ。


その日はマックスの収穫第一日目で、レニエの畑。
左手の丘がコート・ド・ブルイィ、
右手に建物が集まってみえるところがレニエの町
たっぷりした立派なぶどうがいっぱいなっていて、ジャン=ルイの雹被害の畑とのずいぶんな違いに驚きました。
収穫しながら選果するように言われましたが、トラックに積まれたものをもう一人がさらに選果。

私は慣れないので、いつも遅れとり、列の最後の方は他の人が助けてくれました。中には摘むのがすごーく早い男性がいて、私が列の半分くらいのところでもう終わっている。その人はもう40年近くボジョレで収穫をやっているのだとか。私もあと何年か続けたら、同じくらい早くとは言わないけれど、少しは近づけるかな?

9時ちょっとすぎ、ドメーヌに戻っていたマックスが再登場。お待ちかねのCasse-croûteです!
ここでもやはり、乾燥ソーセージやパテ、チーズ、ワイン。コーヒーもあったようですが、誰も手をつけず…。
畑に到着した頃はまだ涼しかったのですが、だんだんと太陽が照りつけ、暑い!男性は上半身裸になる人も。

1時を過ぎて一旦ドメーヌに戻り、お昼ごはん。収穫チームは先に食べ始めましたが、マックス初め、ドメーヌの人たちは引き続きバケツを洗ったり、収穫したブドウを冷蔵室へ運んだり…。私たちがコーヒーを飲む頃にやっとテーブルにつきました。
「収穫の間はそのことで頭がいっぱいになるんだ。寝ていても蔵の中のちょっとの物音が気になったりしてね」と。これは収穫を手伝った今までの生産者さんも同じでしたが、全身全霊込めている感じです。「これだから奥さんが嫌になって出て行っちゃったんだ」と笑っていましたが…たしかに家族の理解がないと難しい仕事かも。

午後、同じ畑へ戻り、再び収穫。
今度は2列ほどやったら休憩、を繰り返し、わりとラク。
そして、みんな、休憩のたびにビールやワインを飲む、飲む、飲む…!
そして、ワイヤレス・スピーカーを持ってきていたので、トラックからHipHop、パンクなどを大音量で流す…。
個人的には、好きではない音楽を聞かされるのは苦痛なのですが、この風変わりな、お祭り的な、リラックスした雰囲気の収穫は楽しい!
同年代の女性は、「ここの収穫はいいね!」「単なる労働になるのは嫌よ」と嬉しそう。「マックスに10年契約してもらおう!」と笑っていました。

6時前には終了し、ドメーヌへ戻ってアペリティフ。
マックスが彼のワインを色々と開けてくれて、なんと垂直テイスティングまで!
垂直テイスティングとは、同じキュヴェの違う年代のものをテイスティングするものです。
モルゴン・ヴィエイユ・ヴィーヌの2003年、2007年、2012年の三本立て!
2007年は少しパワーが落ちてきている感じがしましたが、2012年はフルーティで軽め、酸がすっきりとワインをスマートにさせている。
面白かったのは2003年。
私にとっては、まさに梅酒!!な味でした。
2003年は歴史的猛暑で、水不足もあり、ブドウが干上がっていたらしい。収穫も例年よりずっと早く、8月だったとか。「酸がなくて、すごく難しかった」と回顧するマックス。でも梅酒っぽいということは、酸が全然ないわけではないと感じたのですが…。私はすごく好きです!


収穫二日目はレニエの畑の続き。
到着した頃はまだ太陽がのぼりきっておらず、朝露がブドウの葉に残っていて、手がかじかむ…。
朝日がまぶしくなってきた…と思ったら、昨日と同じくCasse-croûteの頃には日差しがきつくなってきて、みんなTシャツ姿に。

午前中でレニエの畑が終わり、みんなでトラックに乗り込んで、モルゴンの畑へ移動。

こちらは高台にあり、急勾配。
ぶどうがいっぱいになったバケツを集めてまわる役の男の子が大変そう。バケツがいっぱいになってきた収穫人が「Seau!(ソー=バケツ)」と呼んでも、なかなか下りてこず、3、4人で口々に「Seau!」と叫んでからかったり。でも平坦なところでも「大変な役だなあ」と思っていたのに、この急勾配では…。容器を背負って集める場合もありますが、ここではバケツを手に持って上り下りだったので、余計にきつそう。腕力が要りますね。
一列終わって、集めて選果したものをトラックに積み込む
1時を過ぎて、列の途中で作業を中断、ドメーヌへ戻ってお昼ごはん。私は2時半過ぎのTGVでパリへ戻るため、 ささっと食べて、皆さんにお別れの挨拶をして出てきました。
参加期間がすごく短かったのが残念です。お別れのときに「また来年!」と言ってくれた人もいて、本当にまた来年来ようかな?と思いました。

雹被害のあった今年のボジョレ、逃れた畑もあり、必ずしも「ダメな年」というわけではないと思います。被害のあったドメーヌにとっては、たしかにかなり痛手です。それでも収穫して、工夫して(区画別キュヴェをなくし、まとめて醸造するとか、ブドウを買うとか)、頑張っています。

「ボジョレ」というとヌーヴォーのイメージが強いようですが、もっと醸造に時間をかけたものもあります。残念なことですが、ドメーヌ・ド・ラ・グランクールの人たちと話していたときに、ボジョレという地域はワイン産地としてあまり高く評価されていないというのが一般認識のようだ、ということを思い出しました。それでも、今まで収穫にたずさわったサヴォワやジュラに比べると、ワイン製造をもっとおしすすめてきた地域なのは間違いありません。それは、生産量を狙って工業的なワイン造りが発展してきたという悪い意味もあります。でも、「自然派ワインの父」と言われるジュール・ショヴェがいて、継承したマルセル・ラピエールがいて、今、自然派ワインをつくる人たちがたくさんいて、そういう人たちが仲良く日常で集まっていて… ボジョレという土地はやはりワインの大きな産地なんだなあ、と感じました。 のびのびとした雰囲気があり、家族的なつながりがあり、ワイン生産者でいることに対して肩肘張る必要がない感じ。(まあ実際はどうなのかわかりませんが…。)いいなぁ。

縁あって収穫に参加することができて、良い経験になりました。
パリからわりと近いし、また行きたい!

Great thanks to Aaron!!

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