2012年7月24日火曜日

ワインの補糖

前回、アルコールはぶどうの糖分から発生すると説明しましたが、この糖分の調整というのがとても難しいようです。というか、人工的に調整はできないので、収穫するタイミングをよく見計らわないといけません。ぶどうがまだしっかり熟していない状態で収穫してしまうと、アルコール度が足りなかったり、酸の多いワインになったりしてしまいます。かといって、収穫直前の天候によっては、せっかく育てたぶどうがダメになってしまうこともあるので、待ち続けるのも簡単ではありません。

糖分が足りない状態でぶどうを収穫した場合、どうしたらよいでしょうか?
多くの生産者にとって、その答えは簡単、「糖分を補えば良い」のです。
11月の第三木曜日が解禁日となっているボジョレ・ヌーヴォーなどは、解禁日に合わせて出荷しなければいけないので、収穫もあまり待っていられないし、醸造に時間をかけられません。(というか、逆に時間をかけないのが新酒の特徴なのですが…。)となると、少し危うい仕事になります。そこで、生産者は補糖をすることがあります。
これはAOC(原産地統制呼称)を名乗る場合の指南書でも認められている場合があります。そして、認められる補糖の量は、年によって変わるそうです。なぜなら、暑い年と涼しい年では、ぶどうに含まれる糖分が変わるからです。比較的涼しく、甘いぶどうが収穫できなかった年には、特に補糖が認められます。
また、シャンパーニュやアルザスなどの涼しい地域では、当たり前のように補糖する生産者も多いようです。

基本的には、他のぶどうやビーツなどから摂取した糖ですが、例外として精製した糖、つまり砂糖を入れることもあるようです。
以前、テレビのルポルタージュで、大型スーパーで大量の砂糖を買ったワイン生産者が疑われ、監査が入ったところ、ボジョレ・ヌーヴォーを作るのに許容以上の補糖をしていたことが発覚した、と伝えていたのを見たことがあります。

逆に、温暖化の現象によって気温が上がるのと水不足とでぶどうの果実が濃縮され、アルコール度数が上がってしまい、困っている生産者もいます。特に南部ではそうです。2011年は暑い夏が長く続き、全般的に南ローヌではかなりアルコール度数が上がってしまったようです。ちょうど醸造が始まった11月頃、シャトー・ヌフ・ドュ・パップの生産者を訪問したのですが、「今年は本当にアルコール度が高くて困っていて、周りでは水で薄めることにした生産者もいる」と言っていました。

絶対に補糖はしない、水で薄めたりもしない、という生産者も勿論います。ただ、AOC(原産地統制呼称)を名乗るにはアルコール度数の規定もパスしなければいけないので、それを捨てる覚悟でワイン作りにのぞまなければならなくなります。
しかし、添加物を加えることなく、ぶどうそのもの、ぶどうの表現するそのままからワインを作る…そんな自然体の「テーブル・ワイン」と、いわゆるブランドのひとつであるAOCを得るために補糖や加水したワイン、どちらを選ぶかと聞かれたら、私は迷わず前者を選びます。(そしてそれが美味しくなかったら、それはまた別の話です。)

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